D-α-トコフェロール
シークヮーサーに含まれるビタミンEは、100gあたり0.5mgしか含まれていません。果物や野菜にはビタミンEはあまり含まれていません。果物の中で比較的多く含まれるものは柚子(アイキャッチ画像)ですが、100gあたり3.4mg程度です。アボカドは100gあたり3.3mg程度、きんかんは100gあたり2.6mg程度です。
シークヮーサーに含まれるビタミンCは100あたり11mgです。
ビタミンEはビタミンCと共存することにより安定化するといわれています。それはどういうことかというと、簡単にいえばこういうことです。ビタミンEはビタミンCより抗酸化作用が強いです。一緒に存在すると先にビタミンEが酸化されます。それをビタミンCが元に戻してくれるという仕組みです。もちろんビタミンCは犠牲になっているので元には戻りません。
D-α-トコフェロールのIUPAC名
環状部分がクロマン環であるとして命名すると下記のようになります。
(2R)-2,5,7,8-Tetramethyl-2-[(4R,8R)-4,8,12-trimethyltridecyl]chroman-6-ol [IUPAC]
(2R)-2,5,7,8-テトラメチル-2-[(4R,8R)-4,8,12-トリメチルトリデシル]クロマン-6-オール
ベンゾピラン環が一部水素化されているとして命名すると下記のようになります。
(2R)-3,4-Dihydro-2,5,7,8-tetramethyl-2-[(4R,8R)-4,8,12-trimethyltridecyl]-2H-1-benzopyran-6-ol
(2R)-3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-[(4R,8R)-4,8,12-トリメチルトリデシル]-2H-1-ベンゾピラン-6-オール
光学異性体の命名は複雑です。このようなものを勉強する人は本当にそれを専門として研究している研究者か大学生ぐらいしかいないと思います。
ヒトに必要な光学活性物質
α-トコフェロールはD-体です。タンパク質を構成するヒトに必要なα-アミノ酸はL-体で,D-体ではありません。でも、グルコースのような糖はD-体です。これは、α-アミノ酸ならL-体でないとだめだけど、ものによってはD-体でないとだめだということです。ヒトに必要なのは何でもL-体だという考えは間違いです。
DL表示法とRS表示法について
ちなみに光学活性物質(キラルな分子)の立体配置の表示法にはDL表示法とRS表示法があります。DL表示法ではD-体とL-体は立体配置で決まっています。D-グリセルアルデヒドを基準にしています。RS表示法はその都度、4つの置換基の優先順位が時計回りか反時計回りかでR-体、S-体を決めるので、D-体の立体配置であってもR-体のものとS-体のものがあります。ということは、D-体、L-体は基準物質のD-グリセルアルデヒドの立体配置を知らないとわからないですが、R-体、S-体は自分で導きだすことができることになります。よって、RS表示法をDL表示法に自動的に変換できるわけではありません。
例えば、α-アミノ酸であればL-体はS-体、D-体はR-体と覚えておいたとして、ほとんどのα-アミノ酸にはあてはまりますが、L-システインには当てはまりません。システインのL-体はR-体です。なぜかというと、システインの側鎖にはα-アミノ酸の中では重い元素の硫黄Sがあるからです。不斉炭素に付いている水素原子Hが自分の目から最も遠くなるように分子を見たとして、H以外の3つの置換基を元素の重い順に辿ってみた時に、時計回りに回ればR-体、反時計回りになればS-体です。この時、20種類のα-アミノ酸のうち、グリシンは不斉炭素がないのでキラルな分子ではありませんが、残りの19種類のうちL-システインだけはR-体です。ほかの18種類はS-体です。よって、DL表示とRS表示を相互に変換する場合は、例外が少ない場合はそれを覚えておくと便利です。私はα-アミノ酸の場合はL-システインのみR-システインと覚えています。残りの18個はL-体はS-体で、グリシン(アミノ酢酸)だけは光学活性ではありません。