シークヮーサーに含まれるビタミンCの性質・効能とIUPAC名の付け方

ビタミンCの性質・効能

シークヮーサーにもほかの柑類同様、ビタミンCが豊富に含まれています。豊富に含まれていることは間違いないのですが、シークヮーサーの最大の特徴はクエン酸含有量が柑橘類の中では最も多く、しかもほかの柑橘類にはほとんど含まれていないノビレチンを含んでいることと言ってもいいでしょう。そういう意味ではシークヮーサーにはほかの柑橘類同様、当たり前にビタミンCは含まれていて、さらにクエン酸とノビレチンが豊富ということができます。

ビタミンCは強い抗酸化物質です。水に溶けるので、過剰摂取しても余った分は尿と一緒に出てきます。一度に摂り過ぎると無駄になる分子が多いといえます。それでも野菜や果物から積極的に摂る必要があります。特に喫煙者は活性酸素を捕捉してくれるビタミンCを積極的に摂りたいものです。

ビタミンC

ちなみにヘスピリジン(ビタミンP)はビタミンCを補助的に安定化させるといわれています。

ビタミンCのIUPAC名

ここではフラン骨格を中心にして命名します。

結論からいうとIUPAC名は、

(R)-3,4-dihydroxy-5-((S)-1,2-dihydroxyethyl)furan-2(5H)-one

となります。5員環の一角を形成している酸素原子Oを1番として命名します。

フラン(furan)
フラン

ビタミンCの場合、フラン環に二重結合に関与しない骨格原子があるために二重結合に関する位置異性が生じます。下記の3種類があります。ただし、下記の3種類では便宜的に置換基を省略しています。全く置換基が付いていないのであれば、真ん中と右側の化合物は全く同じものです(左右反転すれば同じです)。しかし、ビタミンCの中のフラン環のように置換基が付いていて非対称になっている場合は、下記の3種類の異性体が一応存在するとして考えましょう。

指示水素の付いたフランの異性体指示水素の付いたフランの異性体の一つ
指示水素の付いたフランの異性体指示水素の付いたフランの異性体の一つ
指示水素の付いたフランの異性体指示水素の付いたフランの異性体の一つ

本来、フランはC=C二重結合が2つあります。でも、上記の3つの異性体はC=C二重結合が1つしかありません。これは、C=C二重結合のところの1本の結合に水素原子Hが2個付いて単結合だけ残ったと解釈します。いわゆる水素付加反応が起こったと考えます。そうすると二重結合が単結合になったことが理解できます。

この場合、水素原子Hの数はどうでもよくて、Hがどこに付加したのかを示す位置番号は明記しなければなりません。イタリック体の大文字Hの前の数字は位置番号であって、H原子の数ではありません。

そこで、ビタミンCのフラン環の構造をがどれにあたるか特定するためにもう一度IUPAC名を見てみると、

(R)-3,4-dihydroxy-5-((S)-1,2-dihydroxyethyl)furan-2(5H)-one

となっていて、赤で示した部分が指示水素を指定した部分です。指示水素はイタリック体の大文字Hで表わします。その前の数字5は位置番号であって、H原子の数ではありません。つまり、フラン環の5番の炭素のところにH原子が付いていることを示しています。その前の位置番号2はケトンのカルボニル基の炭素の位置番号です。フラン環の2番のところは本来H原子が2個あったのですが(上記の3つの異性体のうち、左端と真ん中の異性体はH原子が2個あります)、そこの炭素はビタミンC分子中では>C=Oというケトンに分類されるものになっていて、H原子が必要なくなっているので、指示水素は指定しなくてもよくなっています。ビタミンC分子中のフラン環がケトン体になった化合物はfuran-2-oneとなります。ケトンはアルカンalkaneの語尾のeをとってone(オン)を付けるからです。2番の炭素がケトンのカルボニル基(>C=O)になっていることを意味しています。

フラン環に関しては、あと考慮しなければならないのは、水酸基が2個付いていることです。3番と4番の炭素に付いているので、

3,4-dihydroxyfuran-2(5H)-one

となります。これが5位の置換基を考慮していないフラン環に関するIUPAC名です。

今度はフラン環の5番のところに付いている置換基を命名します。そこにはいわゆるエチレングリコールHOCH2CH2OHの炭素からH原子が1個とれてフラン環の5位の炭素と繋がったと考えることができます。つまり、炭素数が2個で、水酸基が1番と2番の炭素に1個ずつ、合計2個付いているので、エチレングリコールのIUPAC名は1,2-ethanediolとなります。でもエチレングリコールは置換基としては使えないので、2つのアルコール性水酸基が付いたエチル基が付いていると考えます。すると、1,2-dihydroxyethylとなります。これを3,4-dihydroxyfuran-2(5H)-oneと合体すると

3,4-dihydroxy-5-(1,2-dihydroxyethyl)furan-2(5H)-one

となります。これで一応完成です。キラルな炭素(不斉炭素)が2個ありますが、それらを考慮しなければこれで完成です。

R-体, S-体の考え方

さらに光学異性体(光学対掌体、エナンチオマー)を区別しましょう。エナンチオマーは通常、例えばα-アミノ酸の場合はD-体、L-体、DL-体(ラセミ体)で表わされますが、これは、D-グリセルアルデヒドという基準物質を用いて、同じ立体配置のものをD-体としています。それを鏡に映した時のものと同じ立体配置のものをL-体としています。DL-体はラセミ体ともいい、D-体とL-体の等量混合物です。このDL表示法は基準物質を用いるので、それを知らない場合は自分で導くことができません。

一方、RS表示法は基準物質を知らなくても自分で考えて誘導することができる方法です。例えば20種類のα-アミノ酸において、キラルでないグリシン(アミノ酢酸、H2NCH2COOH)は除いて、残りの19種類のα-アミノ酸の中で、L-システインだけはR-システインで、残りの18個はL-体はS-体です。ここではRS表示法の考え方を説明します。

キラルな炭素原子は4本の手に4つとも異なる原子や原子団が付いています。海岸に置いてあるテトラポッドを思い起こしてください。あの4本の手にそれぞれ異なる置換基が付いているとします。上記のビタミンC分子の中のくさび形の結合がある炭素2ヶ所がキラルな炭素です。そこがR−体かS-体かを指定します。

まず、エチレングリコール型の置換基の中の1個の炭素がR−体かS-体かを見ます。

四面体構造の一角がH原子で、残り3つがフラン環と、-CH2OHと、-OHです。この中で、そのキラルな炭素原子と直接繋がっている原子はO(水酸基)とC(-CH2OHのC)とC(フラン環)です。この中で優先順位1位はO原子です。原子番号がCよりOが大きいからです。それでは2位はどちらのC原子でしょうか。-CH2OHのCはOとHとHが結合しています。フラン環のCは隣接するOとCが結合しています。よって、これらの中で最も原子番号が大きいOが付いていて、次にCが付いている炭素原子が優先順位2位となります。よってフラン環が2位で、-CH2OHのCは3位です。

ここまでわかればあとは簡単です。キラル炭素の4本の手が形成する四面体の4つの角のうち、水素原子Hが自分の顔から最も遠くなるように四面体を見ます。つまり、先の3つの置換基が形成する三角形が顔の正面に来るようにします。そして、優先順位に従って辿っていくと反時計回りになっていることがわかります。この場合、sinisterの頭文字をとってS-体となります。逆の場合はrectusの頭文字をとってR-体となります。

まとめると、エチレングリコール部分の2個の炭素のうちの1個はS-体です。もう1個の炭素原子はキラル炭素ではありません(アキラルです)。

もう1ヶ所の方も同様な考え方でいくと、R-体となります。すなわち、5員環の一角のキラルなC原子に付いているH原子以外の3つの原子はOとCとCです。優先順位1位はOです。では、2位はどちらの炭素原子Cでしょうか。両方ともO原子が付いているので、順位が付けられそうにありませんが、よく見てみると片方のCは3本の手にOとCとHが付いています。もう片方のCは3本の手にOとCとCが付いています(二重結合の2本とも同じCに結合しています)。つまり、ここでは後者のCが優先順位が高くなります。それを上記の場合と同様にテトラポッドで考えます。キラル炭素に付いている水素原子Hが自分の顔から最も遠くなるように四面体を見て、3つの置換基が形成する三角形が顔の正面に来るようにします。そして、優先順位に従って辿っていくと時計回りになっていることがわかります。よって、rectusの頭文字をとってR-体となります。

まとめると、5員環の一角の不斉炭素はR-体となります。

よって、(R)-3,4-dihydroxy-5-((S)-1,2-dihydroxyethyl)furan-2(5H)-one の完成です。

以上です。今回は有機化学を勉強している薬学部、工学部、理学部の大学生向けの講義みたいになてしまいました。







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