柑橘類に含まれるオーラプテン
柑橘類に含まれる発がん抑制作用のある有機化合物として知られているものにβ-クリプトキサンチン、オーラプテン、ノビレチンがあります。ここではオーラプテンについて扱います。
オーラプテンは、夏みかんやグレープフルーツなどの皮に含まれている香りの成分です。
オーラプテンの体系名(IUPAC名)は7-[[(2E)-3,7-dimethyl-2,6-octadienyl]oxy]-2H-1-benzopyran-2-oneです。7-geranyloxycoumarinという名称もあります。分子式はC19H22O3です。
オーラプテンの色
オーラプテンはクマリン環に炭素数10個の置換基がエーテル結合(R-O-R’)でつながっています。この化合物の色や蛍光性はクマリン環の部分だけに由来します。
体系名(IUPAC名)の付け方
以下は化学と薬学の学生以外はスルーしてください。とても難しいです。
Eは二重結合の部分がトランス型であることを意味しています。その場所が2番の炭素のところということです。括弧に入れて表記します。そして、3番と7番の炭素にメチル基(-CH3)がそれぞれ1個ずつ合計2個付いた炭素数8の炭化水素ということで、dimethylが付いたoctaneとして命名すると、(2E)-3,7-dimethyloctaneとなります。これにC=C二重結合があるので基本的に語尾のaneをeneに変えます。ここでC=C二重結合が2番と6番の炭素に合計2個あるので、2個を表わすdiをeneの前に付けます。すると(2E)-3,7-dimethyl-2,6-octdieneとなります。しかし、octdieneは綴りがおかしいのでaを入れてoctadieneとします。つまり、C=C二重結合が2個付いている時はadieneを付けます。同様に3個の場合は位置番号の数字3つとatriene, 4個の場合は位置番号の数字4つとatetraeneを付けて命名します。
そして、最後の仕上げです。今、命名したものは1つの独立した化合物ではなく置換基となっているので、語尾のeをylに変えます。アルカンがアルキル基になるというのと同様です。この置換基がクマリン環の7番の炭素の位置の酸素原子Oに付いているので、[[先ほど命名した置換基のyl型]-oxy]coumarinとします。すると、7-[[(2E)-3,7-dimethyl-2,6-octadienyl]oxy]coumarinとなります。coumarinの部分の系統名は2H-クロメン-2-オンなので、7-[[(2E)-3,7-dimethyl-2,6-octadienyl]oxy]-2H-chromen-2-oneでもいいです。また、クロメン(chromene)は1-ベンゾピランと同じなので、2H-1-benzopyran-2-oneを使って7-[[(2E)-3,7-dimethyl-2,6-octadienyl]oxy]-2H-1-benzopyran-2-oneでもいいです。これで完成です。
さらに詳細な説明
2Hの意味は、2番の炭素に水素原子が付いて不飽和結合が飽和の形になっているという意味です。ベンゾピラン環の2番の炭素-CH=のところが-CH2-になっていることを表わしています。しかし、最後にそこの部分をケトンの形にして命名するので、2H-chromeneの語尾のeを取って-2-oneを付けます。ケトンはalkaneの語尾のeを外してone(オン)を付けalkanone(アルカノン)として命名するからです。2H-1-benzopyranには語尾にeがないのでそのまま-2-oneを付けます。-2-oneの2は2番の炭素がケトン(>C=O)という官能基になっていることを表わしています。
例えば代表的なケトンであるアセトン(acetone, CH3C(=O)CH3) について考えてみます。「アセトン」は慣用名ですが、IUPAC名は炭素数3のケトンということでpropane → propanoneとなります。この場合は2番の炭素が>C=Oになっているケトンになので2-propanoneとなります。でも、炭素数3のでケトンであればC=Oの位置は2番しかないのは当然なので付けなくてもよいことになります。1番と3番は末端なので、そこにC=Oがあれば-CH(=O)、つまり一般に-CHOと表記されるアルデヒドであり、ケトンではありません。炭素数3のpropanoneの異性体でもあるアルデヒドはpropanalとなります。飽和炭化水素のpropaneの語尾のeの代わりに-alを付けてます。この場合は1-プロパナールとしなければならないと考えがちですが、アルデヒド基の炭素は自動的に1番なので1-propanalとはしません。