温州みかんに含まれるβ-クリプトキサンチンの正式名称をつけてみる

β-クリプトキサンチンの構造

β-クリプトキサンチン(β-cryptoxanthin)はβ-カロテンに水酸基が1個付いたものです。抗酸化作用があります。ヒトではビタミンA(レチノール)に変換されるプロビタミンAとみなされています。

β-クリプトキサンチン
β-クリプトキサンチン

β-カロテン
β-カロテン

β-クリプトキサンチンは、温州みかん、ポンカンなどのマンダリン(みかん類)に多く含まれます。一方、文旦類やオレンジにはほとんど含まれていません。

β-クリプトキサンチンの体系名(IUPAC名)

命名は先に付けたβ-カロテンのIUPAC名をもとに、右側の置換基から左側に向かって付けていく、すなわち、ルテインの命名で採用したように、右側の大きな置換基が付いたアルコールとして命名してみます。

まず、両側のシクロへキセン環を除いた主鎖の炭素数を数えてみると、全部で18個あります。よって、相当する飽和炭化水素(アルカン)のオクタデカン C18H38として、これを起点として命名します。

octadecanonaene

C=C二重結合が9個あるのでoctadecaneの語尾のaneを取ってnonaeneを付けます。このとき、octadecとnonaeneの間にaを入れてoctadecanonaeneとなります。

(ここで注意する点があります。C=C二重結合が1個の時だけaは不要でeneだけ付けます。つまり、octadeceneとなります。でも、eneが2個以上の場合はadiene, atriene, atetraene, ・・・となっていきます。代表的な例としては、ゴムの原料の1,3-butadieneがあります。)

次に、C=C二重結合の2つの炭素のうちの最初の炭素の位置番号を全部挙げます。すると、​1,3,5,7,9,11,13,15,17-となります。よって、​1,3,5,7,9,11,13,15,17-octadecanonaeneとなります。

これにメチル基が4個付いています。位置番号を全部挙げると、3,7,12,16-となります。よって、​3,7,12,16-tetramethylを上記の名称に入れると、3,7,12,16-tetramethyl-​1,3,5,7,9,11,13,15,17-octadecanonaeneとなります。この分子の左端と右端に六員環のシクロヘキセンが付いています。
テトラメチルオクタデカノナエン

β-クリプトキサンチン

ここで、右端の六員環が中央のテトラメチルオクタデカノナエンに付いたものを置換基として、これが左端の六員環に付いているとして命名してみると、※

4-​[18-​(1,3,3-​trimethylcyclohex-1-enyl)-​3,7,12,16-​tetramethyloctadeca-​1,3,5,7,9,11,13,15,17-​nonaenyl]-​3,5,5-​trimethylcyclohex-​3-​en-​1-​ol

つまり、水酸基が付いた炭素を1番とすると、そこからC=C二重結合が近い方に向かって番号を付けて、C=C二重結合の最初の炭素Cは3番になります。そこにメチル基が1個付いています。さらに、5番の炭素にメチル基が2個付いています。よって、合計3個のメチル基があるので、3,5,5-trimethylとなります。そして、大きい置換基の付いたアルコール(この場合はシクロヘキサンにC=C二重結合が1個と(アルコール性)水酸基が1個付いたシクロヘキセノールcyclohenenol)とて命名するので、水酸基の付いている1番の炭素原子からみて二重結合の最初の炭素の位置番号は3番なので、cyclohenenolに位置番号を割り込ませてcyclohex-​3-​en-​1-​olとなります。

和名にするためにカタカナに変えると、

4-​[18-​(1,3,3-​トリメチル-​1-​シクロヘサ-2-エニル)-​3,7,12,16-​テトラメチルオクタデカ-​1,3,5,7,9,11,13,15,17-​ノナエニル]-​3,5,5-​トリメチルシクロヘキサ-​3-​エン-​1-​オール

となります。

※ 化合物を命名する時、どの部分をメインの化合物にして、どの部分を置換基とするかは考え方は1つではありません。論文の論旨とか、命名しやすさとか、総合的に考えて決めるとよいと思います。ただし、分岐した飽和炭化水素の場合は、主鎖は自分で決めるのではなく、最も長くなる(炭素数が多くなる)部分を探し出さなければなりません。これは規則で決まっています。そして残りが置換基です。






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