CONTENTS
いろいろな食材のビタミンB2含有量(mg/100g食材)
シークヮーサー100gに含まれるビタミンB2の含有量は0.03mgといわれています。その量が多いか少ないかをみるために、下表に代表的な食材100g当たりのビタミンB2含有量(ミリグラム (mg) = 10-3g)を示しています。各食材のカテゴリー上位から代表的なものを1〜2個適当に選んで示しています。食材カテゴリーの境界線は表には示していません。柑橘系に含まれるビタミンB2はどの程度かがわかればいいからです。
リボフラビン (Riboflavin) は、ビタミンの中で水溶性ビタミンに分類される生理活性物質で、ビタミンB2 (Vitamin B2) 、ラクトフラビン(Lactoflavine)とも呼ばれます。糖アルコールのリビトールが蛍光性を示す剛直なヘテロ環状イソアロキサジン環に結合したもので、リビトールに水酸基がたくさん付いているため水溶性を示します。ビタミンGとも呼ばれます。Gはどこから来ているかというと、growth factorのgです。かつては成長因子(growth factor)として知られていたからです。
食材100g当たりのビタミンB2(mg)(各種食材の上位から1〜2位を適当に抽出)
こうして全体的に眺めてみると、柑橘類にビタミンB2(リボフラビン)はあまり含まれていないことがわかります。よって、シークヮーサーの0.03mはゆず(果皮)の0.10mg, レモン(全果)の0.07mg, きんかんの0.06mgには及びません。シークヮーサーは柑橘類の中では多い方と言えますが、柑橘系自体、他の食材と比べるとビタミンB2の含有量はかなり少ないといえます。
柑橘類からビタミンB2を摂りたいなら、ゆず、レモン、金柑がいいようです。金柑はどんな栄養素の場合も上位にあることが多いです。しかし、効率的に摂りたいなら柑橘類よりよいものがたくさんありそうです。
レバー、海苔、しいたけ、抹茶は何かにつけ上位にあるような気がします。日本テレビの「世界一受けたい授業」でだいたい困った時にはトマトかヨーグルトと言っておけば当たるみたいな感じですかね(あくまでも個人が持っている印象です)。
ビタミンB2(リボフラビン)のIUPAC名
ビタミンB2(リボフラビン)
ビタミンB2とリボフラビンは慣用名です。正式名称(系統名)は、
7,8-dimethyl-10-[(2R,3R,4S)-2,3,4,5-tetrahydroxypentyl]benzo[g]pteridine-2,4(3H,10H)-dione
となります。プテリジン環の右下の辺をaとして、半時計回りにb, c, d, e, f, gと見ていくと、左端の垂直な辺がgとなります。そこにベンゼン環がくっつくと、プテリジン環がイソアロキサジン環になります。プテリジン環は上記のビタミンB2(リボフラビン)の基本骨格になっていることがわかります。よって、IUPAC名の一部はbenzo[g]pteridineとなります。
プテリジン環
このプテリジン環にベンゼン環が付いたイソアロキサジン環の7-位と8-位にメチル基が付いています。1番はプテリジン環またはイソアロキサジン環の左下の窒素原子Nです。そこからビタミンB2(リボフラビン)のイソアロキサジン環を反時計回りに回っていくと2つのメチル基が付いているところの炭素C(120°の角のところが炭素C)が7番と8番になります。よって、7,8-dimethyl-benzo[g]pteridineとなります。
次に、糖アルコールのリビトールを付けます。先ほどの数え方でいくと10番の窒素原子Nのところにリビトールが付いています。リビトールの部分の炭素の数は5個です。炭素数5の飽和炭化水素(アルカン)はペンタンpentaneです。これが置換基としてイソアロキサジン環に付いたと思えば、ペンチル(pentyl)基となります。よって、7,8-dimethyl-10-pentylbenzo[g]pteridineとなります。このpentyl基に水酸基(-OH)が4個(tetra)付いているのでtetrahydroxyを入れます。その水酸基が付いている炭素の番号はNに直接繋がっている炭素が1番となるので2,3,4,5-となります。よって、7,8-dimethyl-10-[2,3,4,5-tetrahydroxypentyl]benzo[g]pteridineとなります。
次に、イソアロキサジン環の右端の部分がケトンという化合物群に分類される形をしています。すなわち、>C=Oとなっている部分が2ヶ所あります。ケトンのIUPAC名は一般名alkaneの語尾のeをとって-one(オン)を付けます。例えば有名なアセトンは示性式が(CH3)2C=Oですが、これは慣用名ですのでIUPAC名に直すとpropanoneとなります。炭素数3個の飽和炭化水素プロパンpropane(CH3CH2CH3)のpropaneから語尾のeを外して-oneを付けるとプロパノンpropanoneというケトンという化合物になります。これに倣って、イソアロキサジン環の右側の2-位と4-位がケトンになっているように命名すると、2つあるのでdiを付けてdioneとなります。2-位と4-位なので2,4-dioneとなります。これを最後に付けます。すると、7,8-dimethyl-10-[2,3,4,5-tetrahydroxypentyl]benzo[g]pteridine-2,4-dioneとなります。(この場合はpteridineの語尾のeは外さなくてもよくなっています。diを使っているからです。仮に2-位に1個しかなかった場合は〜〜pteridin-2-oneとなりますが、di, triなどの接頭辞が入った場合はそのままです!!)
次に指示水素を指定しましょう。元のプテリジン環を見るとわかるように、窒素原子Nには水素原子Hは1個も付いていません。しかし、ビタミンB2のイソアロキサジン環のNには3-位のNにHがついていて、10−位のNには水素原子Hが付いているとみなします。10-位にはHではなくペンチル基が付いているというツッコミが入りそうですが、ペンチル基が付く前は>N-Hだったと考えます。そこで、3-位と10-位に指示水素を指定します。命名はIUPAC名の最後の位置番号のあとに括弧で指定します。すなわち、
7,8-dimethyl-10-[2,3,4,5-tetrahydroxypentyl]benzo[g]pteridine-2,4(3H,10H)-dione
となります。指示水素Hをイタリック体で表わします。
指示水素の付け方の詳細はビタミンCのところでも詳細に書いています。参考にしてみてください。
普通だったらこれで完成としてもいいレベルです(キラル炭素を意識しなくても差し支えない場合)。しかし、光学活性分子が2つの鏡像異性体のうちのどちらなのかまで指定する必要がある場合は、もう少しIUPAC名にDL表示かRS表示で情報を加える必要があります。論文の論旨によってはそこまで必要ない場合もあります。光学活性を意識しない場合、つまりキラルな炭素(不斉炭素)があろうがなかろうが関係ない場合は7,8-dimethyl-10-[2,3,4,5-tetrahydroxypentyl]benzo[g]pteridine-2,4(3H,10H)-dioneで完成としてもいいと思われます。
このR-体、S−体の考え方は上記のビタミンCのところでも詳述していますが、ビタミンE(α-トコフェロール)のところでもざっくりと説明しています。よって、ここでは省略します。
リビトールの部分に光学活性な炭素(不斉炭素)が3個あります。上のリボフラビンの構造式にくさび形で結合が書いてある部分です。黒塗りの方はこのパソコン画面の平面よりも上に水酸基が出ていることを意味しています。点線型のくさびは画面より下に水酸基があることを意味しています。この3ヶ所の炭素の立体配置をRS表示法で表わせば、2番の不斉炭素は(R)体、3番の不斉炭素は(R)体、4番の不斉炭素は(S)体となります。
よって、IUPAC名の完成形(の一つ)は、
7,8-dimethyl-10-[(2R,3R,4S)-2,3,4,5-tetrahydroxypentyl]benzo[g]pteridine-2,4(3H,10H)-dione
となります。どの化合物に何が置換基として付いているかを決める時に、上記のほかにも考え方があるかもしれないから、あくまでも完成形の一つとしています。IUPAC名は複数存在することがよくあります。例えば、上のビタミンB2ではイソアロキサジン環が付いたリビトールとしてIUPAC名に変えていく命名方法も可能です(複雑だと思います)。もう一つの例としては、ビタミンB1にIUPAC名を付けるとき、置換基を持ったチアゾール環がエタノールに付いた化合物として命名しました。これをチアゾール環をメインにして、ベンゼン環とエタノールの部分を置換基として命名する方法もあります。有機化合物の出て来る化学論文を作る時は、共通する部分を主化合物として置換基効果を見る形にした命名方法がわかりやすいと思います。
ビタミンB2の性質
ビタミンB2はビタミンC同様、過剰摂取しても余った分は尿中に排泄されるため、過剰障害は発生しないといわれています。リボフラビンを過剰に摂取したあとは蛍光性のある黄色い尿が出てきます。一度試してみますか?(笑)。