レモン果実の表面は小さな点がたくさんあります。これは油胞と呼ばれ、精油が詰まっています。この精油は香りの源となり、主成分はD-リモネンですが、そのほかにβ-ピネン、γ-テルピネンなどが含まれています。オレンジ油、オレンジオイルとも呼ばれます。
レモンの果実は料理の香り付けのほかに、香水、シャンプー、リンス、石鹸などの香料としても利用されています。油胞は果実だけでなく、葉っぱや枝にもあるので、私はよくエカキムシが葉っぱの中を移動している時につぶしますが、その時、指にレモン果実の皮をつぶした時と同じ香りが付きます。枝を剪定ばさみで切った時にも同様の香りがします。
D-リモネン((+)-リモネン)
D-Limonene((+)-Limonene)
β-ピネン
β-Pinene
γ-テルピネン
γ-Terpinene
レモンの葉っぱの油胞
レモンの葉っぱの拡大写真
D-リモネン、β-ピネン、γ-テルピネンのIUPAC名
D-リモネンの体系名(IUPAC名)は1-Methyl-4-(1-methylethenyl)-cyclohexene、または4-Isopropenyl-1-methylcyclohexeneとなります。慣用名はp-Menth-1,8-dieneです。和名は1-メチル-4-(1-メチルエテニル)-シクロヘキセン、または4-イソプロペニル-1-メチルシクロヘキセンとなります。慣用名はp-Menth-1,8-diene(p-メンタ-1,8-ジエン)です。
DL-体(ラセミ体)の場合は、DL-limonene(DL-リモネン)またはDipentene(ジペンテン)となります。DL-体(ラセミ体)とは、D-体とL-体がちょうど半分ずつ混ざっているものをいいます。
β-ピネンのIUPAC名は(1S,5S)-6,6-Dimethyl-2-methylenebicyclo[3.1.1]heptane、和名は(1S,5S)-6,6-ジメチル-2-メチレンビシクロ[3.1.1]ヘプタンとなります。
γ-テルピネンのIUPAC名は4-Methyl-1-(1-methylethyl)-1,4-cyclohexadiene、和名は4-メチル-1-(1-メチルエチル)-1,4-シクロへキサジエンとなります。
D-リモネン、β-ピネン、γ-テルピネンの水溶性
D-リモネン、β-ピネン、γ-テルピネンのいずれも分子中に水に溶けるための親水基を持っていないため、水には溶けません。いわゆる油です。ただし、γ-テルピネンは水への溶解度が23.4mg/L(25℃, 1気圧)というデータもあります。1リットルの水に23.4mg溶けるということですが、この程度ではほとんど溶けないので水溶性があるとはいえません。