シークヮーサーはクエン酸の宝庫

クエン酸の化学構造

クエン酸を示性式で書くとHOOC-CH2-C(OH)(COOH)-CH2COOHとなります。ざっくり言うと酢酸CH3COOHが3つ繋がって、さらに中央の炭素に水酸基(-OH)が付いたものです。

カルボキシル基(-COOH)が3つ付いた分子なのでトリカルボン酸(tricarboxylic acid)という分類法もあります。ちなみに10までの接頭辞を挙げておくと、mono (1)、di (2)、tri (3)、tetra (4)、penta (5)、hexa (6)、hepta (7)、octa (8)、nona (9)、deca (10)となります。

レモンや梅干しの酸っぱい成分として知られているクエン酸ですが、体にはとてもよいといわれています。酢酸も体にいいと言われていますが、-COOHを持った化合物は広義でカルボン酸(R-COOH)といわれます。

カルボン酸は弱酸です。電離度が非常に小さく、酢酸の場合、常温で1000分子のうち10個前後しか電離していません。これに対して強酸は強い酸で、一般に電離度は1(すなわち100%)とされています。強酸の代表的なものは塩酸(塩化水素HClが水に溶けたもの)、硫酸H2SO4、硝酸HNO3があります。弱酸の代表的なものはリン酸H3PO4、酢酸CH3COOHなどがあります。もし、酢酸が強酸だったら食酢はもっと強烈になることでしょう。もっと水で薄めないとにおいも強烈で、食用にはできないでしょう。でもカルボン酸は弱酸なのでほんの少ししか水中でイオン化(電離or解離)していません。酢酸は電離してCH3COOとH+になっています。この水素イオン(H+)が酸です。

シークヮーサーに含まれるクエン酸

クエン酸が含まれている食品は梅干しが有名ですが、果物であればまずレモンが思い浮かびます。しかし、シークヮーサーのクエン酸はレモンの2倍以上、梅干しの2倍近く含まれています。レモンと梅干しでは梅干しの方が多いからです。梅干しが体にいいと言われるのはクエン酸がたくさん含まれているからと言っても過言ではありません。ただ、梅干しの場合は食塩の摂り過ぎが心配です。それゆえ、梅干し以上のクエン酸を含むシークヮーサーは、それだけでも優れたフルーツであるといえますが、さらにすごいことには、シークヮーサーにはノビレチンという成分が他の柑橘類より圧倒的に多く含まれています。その上で、多くの柑橘類に普通に含まれているヘスペリジンという成分も含まれています。もちろんビタミンCもたくさん含まれています。

つまり、シークヮーサーはノビレチンやクエン酸があまり入っていなかったと仮定した場合に、やっと他の柑橘類の果実と同等であるわけです。これらのことから、シークヮーサーが非常に珍しい成分が含まれている有用な柑橘であることが理解できるばかりでなく、シークヮーサーの産地として有名な沖縄本島の北部の大宜味村が長寿村として知られていること納得がいきます。

シークヮーサーはクエン酸だけではなくノビレチンも含まれています

私がシークヮーサーを自ら栽培しようとしている理由は上記のような有用な柑橘を無農薬で自分の手で収穫したいということなのです。完熟ではない青摘みシークヮーサーであれば、切って焼き魚にかけたり、搾り汁を基本的に少量使うか薄めて使うものなので、普通のオレンジジュースのように100%のものを一度に100mlも200mlも飲むわけではありません。つまり、温州みかんのように大量消費するようなものではありません。よって、少量でも収穫できれば、工夫次第でけっこう使えます。

しかし、栽培は長い年月がかかることや、台風や豪雨などの天災に依存すること、農薬のコスト、害虫の退治、草刈りなどの管理の手間も考えると、市販品があれば買った方がはやいという考え方もあります。青摘みシークヮーサーはレモンのように果実片を搾って料理にかけたり、搾り汁(皮も含めた搾り汁)を薄めて飲んだり、他の飲料とブレンドして飲んだりするので、ジュースというより食酢に近いイメージです。温州みかんやグレープフルーツの原液を薄めずにそのまま飲むのと比べると、かなりコストパフォーマンスは良いです。完熟シークヮーサーはふつうのみかんのように食べられますが、調味料としては物足りません。でも、果肉をおいしく生食した後に、表皮を刻んで和え物に混ぜたり、ソバにかけたりするのも良さそうです。収穫する時期を選ぶことでいろいろな用途が考えられます。






報告する

関連記事一覧